日本人には馴染みの薄いエスプレッソコーヒーもスターバックスなどのコーヒーチェーン店が増えることで、その美味しさとバリエーションの豊富さで人気となり、家庭用のエスプレッソマシンも登場してきました。
今回はエスプレッソコーヒーの仕組みと特徴をクレマの正体にも触れながらご紹介いたします。
1.エスプレッソとは
エスプレッソは機械や水蒸気でコーヒー豆に圧力をかけて抽出する方法です。
日本には馴染みのあるドリップコーヒーと違うところはコーヒー豆に圧力をかけているのがどうかという点です。
ドリップコーヒーの場合はお湯が落ちる重力を利用して、コーヒー豆の中をお湯を通すことでコーヒー成分を抽出していきます。
しかし、エスプレッソは機械でコーヒー豆に圧力をかけることで、抽出するため、雑味などが出にくく、コーヒーの美味しい成分だけを引き出す方法だといえます。
その味は濃厚でコクがあり、飲んだ時の香りも非常に強い事が特徴です。
2.エスプレッソの歴史
エスプレッソは約100年前にイタリアで生まれました。
さらに遡ること100年、1806年にナポレオンがイギリス製品をボイコットをするため、大陸封鎖令を出し、イタリアにフランスの植民地であるアフリカ各国からのコーヒー豆が入ってこなくなり、コーヒー豆が不足してしまいました。
その中、ローマにあるカフェ・グレコという喫茶店のオーナー、サルヴィオーニ氏が苦肉の策としてコーヒーの量を3分の2にし、価格もさげるという策で乗り切ろうとしました。
これが受け入れられ、小さなカップでコーヒーを飲むスタイルが確立し、現在の”デミタススタイル”につながっていきます。
このデミタスカップの誕生から約100年後にベゼラ社のルイジ・ベゼラによって、抽出速度を早めるために作られた機械が完成し、エスプレッソの形が出来上がったのです。
3.イタリア人のエスプレッソの楽しみ方
日本でエスプレッソといえば、カプチーノやカフェラテで楽しむことが多いと思います。
しかし、イタリアではコーヒーを注文するとエスプレッソで抽出したブラックコーヒーが提供されます。
観光でイタリアに行く日本人の中には、そのまま飲んでしまいビックリする人も多いと聞きますが、確かにエスプレッソをストレートで飲むのは、いつもドリップコーヒーを飲んでいる人からすると考えられないほど濃く、いつもブラックコーヒーを飲んでいる人でも飲めない事が多いです。
実際にイタリア人もエスプレッソをストレートで飲むのではなく、砂糖をたっぷりと入れて飲む人が多いです。
しかもあの小さなデミタスカップにスプーン5杯も6杯も入れます。
そして3口4口ほどで飲み干し、カップの底に残った砂糖をスプーンですくって食べる人もいます。
これにはコーヒーを美味しく飲みたいという思いが現れていて、エスプレッソには3つの層がきれいに分かれている物が最高のエスプレッソだと言われています。
その「クレマ」「ボディ」「ハート」の3層がきれいに分かれているのは抽出後10秒ほど。
なので砂糖を入れてもかき混ぜることもせず、クレマを通してゆっくりと砂糖が沈んでいくのを見届けて3口4口で飲み干してしまうのです。
イタリア人のエスプレッソへの思いはこれだけでは無く、家庭でエスプレッソを淹れるための”マネキッタ(モカエキスプレス)”と呼ばれる直火式のエスプレッソマシンが一家に一台というほど多くの家庭に準備されています。
日本でも増えており、”ビアレッティ”や”ペゼッティ”など色々な種類の大きさの物が販売されており、お手入れが楽なところや、手軽な価格が受け入れられて人気になっています。
4.クレマ・ボディ・ハートの3層
エスプレッソをガラスのカップで淹れると良くわかる3層がエスプレッソの美味しさのポイントです。
①クレマ
一番上の層にある、ゴールデンブラウン色の濃厚な泡の層です。
非常にきめ細やかで、なめらかな物が良いとされ、砂糖を入れると泡の層に浮かび、ゆっくりと沈んでいくのが最高のクレマと言われています。
よく、クレマの正体は何ですか。と聞かれます
クレマの正体はコーヒー豆に含まれる炭酸ガスで、クレマはドリップ式では出ることはなく、エスプレッソ式の様に圧力をかけて抽出しないと出てきません。
理由は簡単でドリップの場合はコーヒー豆の中に含まれる炭酸ガスは抽出時に空気中に放出されてしまいますが、エスプレッソ式は空気の逃げ道が無く、圧力のかかった水分の中に押し込められる形になり、抽出時に泡となって浮かんでくるのです。
これがコーヒーの香りを閉じ込める役割を果たし、口に含んだ時の広がる香りを作り上げています。
②ボディ
中間のキャラメル色をした層をボディと呼びます。
コーヒーの味・香りを表現する際にも”ボディがしっかりしている””ボディ感”などと表現されますが、まさにそのボディを表す、コク・深み・厚み・ボリューム感等が凝縮された部分です。
ちなみにこのボディという表現はなかなか難しく、ワインやコーヒーの味を表現する際に使われますが、ライトボディは「あっさり」「軽い」、フルボディは「濃い」「重い」といった味の感じ方を表す表現です。
③ハート
一番下のダークブラウン色の層です。
別名「アロマ」と呼ばれ、抽出したての香りや、最後に口に残るアロマがこの部分に濃縮されています。
この3層がきれいに分かれていることが最高のエスプレッソとされていますが、クレマの正体が炭酸ガスだという事は、やはり新鮮な豆でしか出会えないのも事実です。
5.エスプレッソにおススメの豆と美味しい淹れ方
エスプレッソの美味しさは濃厚である事が条件です。
そのため使うコーヒー豆は、焙煎を深くしたフレンチローストやイタリアンロースト等の深煎りの豆が向いています。
また、その挽き方は細挽きよりも細かい、超細挽きの方が圧力がしっかりとかかり、濃厚で香り豊かなエスプレッソコーヒーとなります。
しかし、この超細挽きという挽き方は専用のミルがないとできませんので、コーヒー豆を購入する際に超細挽きが対応可能かどうか問い合わせしたほうが良いです。
専門店でも超細挽きに対応していないところは多いのでご注意ください。
美味しい淹れ方の条件は「9気圧・90℃・30秒」が基本といわれています。
まずは家庭用の電気式エスプレッソマシンでの美味しい淹れ方をご紹介いたします。
■電気式エスプレッソマシン
①バスケットの水分をふき取る
コーヒー豆は水分がついた時から抽出が始まってしまいます。
まして、エスプレッソ様の超細挽きの場合はより注意が必要で、クレマの出来上がりにも影響しますので、しっかりと水分をふき取ることをおすすめします。
また、バスケットのサイズが違うと圧力をかけた際に、バスケットの中でコーヒ豆が動いてしまい、薄いコーヒーになってしまいますので、必ず抽出するカップの数に合わせたバスケットをお使いください。
②粉を入れる
バスケットの中に粉を入れます。
この時にダンパーと呼ばれる粉を押し固める器具で、粉を均一に押し固めていきます。
押し固まったら、バスケットの縁についた粉をきれいにふき取ってください。
粉が残っていると隙間ができてしまい、上手く圧力がかかりません。
③お湯を出し、カップを温める
エスプレッソマシンの準備ができたらまずお湯をカップに出し、カップを温めます。
これはカップを温めるだけではなく、エスプレッソマシンの中のお湯の温度を下げる狙いもあります。
水蒸気の様な音がしなくなるまで出し続けることで、お湯の温度を90度くらいまでさげてください。
④抽出する
バスケットをセットし、カップのお湯を捨てて抽出を開始します。
時間は約30秒で、コーヒーの色が少し薄くなったくらいで終了してください。
これで美味しいエスプレッソの完成です。
■直火式エスプレッソメーカー(マネキッタ)
①水を入れる
ボイラー部分に水を入れます。
この時必ず安全弁よりも水位が高くならないようにしてください。
安全弁よりも水位が高いと、安全弁からお湯が吹き出す場合があります。
また、ほとんどのマネキッタは抽出できるカップの数が決まっています。
そのため、水位とコーヒー豆の量は毎回同じ量を使ってください。
4カップの物で2杯分のコーヒー豆で抽出しても薄くて美味しくないエスプレッソができてしまいます。
②コーヒーの粉をバスケットに詰める
マネキッタの場合は超細挽きではなく、細挽きの方がおすすめです。
超細挽きの場合、コーヒー豆がフィルターを通過してしまい、コーヒーの中に入ってしまう場合があります。
また、電気式エスプレッソマシンとは違い、ダンパーで押し固めることもせず、コーヒーの粉を入れた後はトントンとテーブルなどに落とす程度で、あとはスプーンで表面をきれいに均せば大丈夫です。
あまり押し固めると、水分がコーヒーの粉を通過できず、ボイラー部分の圧力ばかりが上がってしまい危険な状態になってしまいます。
③サーバー部分を取り付ける
バスケットを入れ、サーバー部分を取り付けますが、この時にしっかりと固定できるまで回してください。
これが甘いと、圧力がかからず、美味しいエスプレッソができません。
④弱火にかける
火をつけてからマネキッタを乗せることをおススメしています。
先にマネキッタをコンロに乗せて火を付けると、最初の大きな火でハンドル部分が焦げたり、溶けたりするので、火をつけて火力を調整してからコンロに乗せましょう。
火力は弱火で数分で抽出が始まります。
⑤火を止める
これが大きなポイントですが、火を止めてもすぐに抽出が止まることはありません。
しかし、最後まで抽出してしまうと薄いコーヒーも出てしまい、雑味も入ってしまうので最後まで抽出せず途中で終わらせることが重要です。
マネキッタのサイズや火力にもよりますが、抽出開始後30秒ほどで火を止めると、最後まで抽出せず、美味しい濃厚なコーヒーを楽しめると思います。
何度か挑戦し、火を止めるポイントを探してみてください。
⑥お手入れ
絶対に洗剤で洗わない。
これがポイントです。
多くのマネキッタがアルミでできており、洗剤で洗ってしまうとコーヒーの油分が落ちてしまい、アルミの匂いがするコーヒーになってしまいます。
使い終わったマネキッタはお湯で洗い流す程度で十分で、あとはしっかりと乾燥させてください。
まとめ
エスプレッソの奥深さは伝わったでしょうか。
カフェラテ、カプチーノは濃厚なコーヒーだからこそ出せる味わいがあり、エスプレッソで抽出したコーヒーにお湯を入れて薄めたアメリカーノも雑味等が少ないとして人気です。
意外にもドリップコーヒーよりもカフェインが少ないという点も特徴です。
色々なバリエーションで楽しめるエスプレッソをご自宅で楽しんでみてはいかがでしょうか。
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